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2012年6月27日 地域医療福祉情報連携協議会 発足記念シンポジウム
「医療介護同時改定が地域医療にどのような影響を与えるか」

ご挨拶 来賓ご挨拶

地域医療福祉情報連携協議会 会長
田中 博
(電報代読)
地域医療福祉情報連携協議会 名誉会長
邉見 公雄

内閣官房 情報通信技術(IT)担当室
参事官 有倉 陽司

総務省 情報流通行政局情報流通振興課
情報流通高度化推進室 室長
吉田 恭子

地域医療福祉情報連携協議会 顧問
国際長寿センター(日本)代表
前 厚生労働省事務次官
水田 邦雄

厚生労働省 医政局研究開発振興課
医療技術情報推進室 室長補佐
塚前 護

経済産業省 商務情報政策局
ヘルスケア産業課 課長補佐
井上 美樹代
地域医療福祉情報連携協議会 会長
東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部 教授
田中 博
―地域医療福祉情報連携協議会のこの一年の活動と今後の方向性―
 地域医療福祉情報連携協議会は、昨年1月28日に地域医療連携の全国的な推進を目標として発足したが、1か月余もない時期に東日本大震災が発災した。そこで、発足時の目標を一時停止して、被災地の「復興後の地域医療IT体制」構築の協力に急遽活動を集中した。
 昨年7月には第2回シンポジウム「震災復興に、地域医療ITは何ができるのか?」を開催し、被災3県の県庁、医療関係者などと協議を重ねた。復興後の医療IT体制について、(1)日常生活圏域の包括ケア、(2) 2次医療圏域での地域医療連携、さらに(3)全県域医療情報システムよりなる「圏域階層的な地域包括IT体制」を提案し、とくに宮城県では「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会」に協力して復興医療IT体制構築に助力した。
 また、今年2月には第3回シンポジウム「福島における地域医療再生と情報連携」を開催し、福島県の複合災害の今後の対策について広く専門家を集め論じた。
 本年はさらに医療と介護の同時改定を受けて地域包括ケアのIT体制、2025年問題への対応を重点的に推進する計画である。
[略歴]
昭和51年 東京大学医学系研究科修了 医学博士 工学博士
昭和52年 東京大学医学部講師
平成 2年 東京医科歯科大学教授
平成15年~19年 日本医療情報学会 理事長 兼 学会長
平成23年~ 地域医療福祉情報連携協議会 会長
平成24年 東北大学客員教授
司会進行(前半)
名古屋大学医学部附属病院 准教授
水野 正明
司会進行(後半)
兵庫医科大学医療情報学
兵庫医科大学病院医療情報部教授
宮本 正喜
協賛企業(展示会出展&広告出稿)
総務省大臣官房審議官(情報流通行政局担当)
阪本 泰男
高齢化社会と医療ICT
 本シンポジウムの開催にあたりまして、総務省における医療ICTの取組について、簡単に紹介させていただきます。
 我が国においては、医師の不足・偏在等に起因する地域医療の疲弊、少子高齢化の進展等に伴う患者数、国民医療費の増加等の多くの課題を抱えております。このような課題に対し、今後は、高齢者が地域社会の支え手となり、一人ひとりが豊かに明るく暮らすことが出来る社会の実現が重要であり、その中で、情報通信技術(ICT)が果たす役割は非常に大きくなってきております。
 総務省においては、「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月)に掲げられた「どこでもMY病院」構想や「シームレスな地域連携医療」の実現に向け、患者の医療・健康情報を地域で安全かつ効率的に流通させるための広域共同利用型の医療情報連携基盤の普及推進のための実証事業である「健康情報活用基盤構築事業」や、被災地における医療情報連携基盤の構築を支援する「東北地域医療情報連携基盤構築事業」など、様々な取組を実施しております。
 また、今後は、高齢者社会の課題先進国として、「医療イノベーション5か年戦略」(平成24年6月)のもと、国際展開も見据えた新産業・新事業創出の観点からの施策の検討も進めていくつもりであります。
 総務省といたしましては、今後とも我が国における医療ICTの利活用の推進に尽力していく所存であり、事業の推進のためには、皆様のご協力が不可欠であると考えており、これまでのご協力に深く感謝いたしますとともに、今後とも一層のご理解とご協力をお願いいたします。
[略歴]
昭和55年 郵政省入省
平成 6年 同 電気通信局電気通信事業部電気通信利用者相談室長
平成10年 同 大臣官房総務課審議室長
平成13年 総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課長
平成15年 内閣官房副長官補付内閣参事官
平成17年 総務省情報通信政策局総合政策課長
平成19年 同 大臣官房企画課長
平成20年 同 大臣官房審議官(情報流通行政局担当)
平成21年 内閣官房 情報セキュリティセンター 副センター長
平成23年 総務省大臣官房審議官(情報流通行政局担当)
厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政、医療・介護連携担当)
唐澤 剛
地域医療の基盤を支える医療情報連携
 今回の診療報酬・介護報酬同時改定の重点課題のひとつは、在宅医療の推進と医療介護連携の強化である。
 診療報酬において、在宅時医学総合管理料の引き上げ、在宅緩和ケアの充実など在宅医療の機能強化と看取りの充実を図った。あわせて、在宅歯科医療、在宅薬剤管理指導の充実強化を進めている。また、訪問看護については、週4日以上サービスを提供できる対象者の拡大や退院直後、外泊日、退院当日の訪問看護の評価を行った。介護報酬においては、ケアマネジメントにおける入院・退院時の情報共有の評価や訪問看護における看取り対応の強化、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービスの評価を行っている。
 このほか平成24年度予算において、在宅医療連携拠点として全国105カ所で事業実施を助成するほか、在宅チーム医療を担う人材育成を行うこととしている。また、平成25年度から実施される新たな医療計画において、在宅医療を5疾病5事業と並ぶ重要な事項として位置づけている。
 今後、地域医療を考える上では、病院間の連携、病院・診療所間の連携、医療・介護連携などとともに、在宅医療を視野に入れた連携体制を構築していく必要がある。このためには、医療情報の連携基盤を適切に構築していくことが重要であり、同時に、地域の医療介護関係者の間に顔の見える関係を作り出していくことが不可欠である。
 なお、平成24年度予算においては、医療機関の主要な診療データを外部に保存することで、災害など非常時のバックアップとするとともに、連携医療機関相互でデータ閲覧を可能とすることにより、災害などの非常時に過去の診療情報による継続した医療の提供と質の高い地域医療連携の推進を図ることを目的として、新たに「医療情報連携・保全基盤推進事業」を実施することとしている。
[略歴]
厚生労働省大臣官房審議官(医療保険・医政・医療介護連携担当)
昭和31年長野県生。昭和55年厚生省に入省。
平成9年介護保険制度準備室次長に就任。16年保険局国民健康保険課長、
18年保険局総務課長、20年大臣官房人事課長、21年より現職。
平成23年3月~同年9月まで、厚生労働省災害対策本部事務局次長を兼務。
President, Gregg L. Mayer & Company, Inc.
グレッグ L. メイヤー カンパニー 代表取締役
Gregg L. Mayer
グレッグ L. メイヤー
米国HITECH法※実施後の進展
"オバマケア"時代における電子カルテの急速な普及

 米国のヘルスケアシステムは、以下で述べる二つの独立した出来事により急速に変化を遂げようとしている。

The HITECH法※
 2009年にブッシュ政権時の経済刺激策として成立した HITECH法(Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act)は、医師や病院に電子カルテ導入費用を償還するというものである。現在のところ、資本コストが障壁となり、新しいシステムの成長はまだ穏やかであるが、もしもこの障壁が取り除かれたならば、ほとんどの事業者が2015年までに電子カルテを装備するようになるだろう。
 全米に新しい電子カルテネットワークが広がれば、電子化された医療健康情報が利用できるようになり、公衆衛生分野の研究や新薬開発に向けた民間の臨床試験だけでなく、個人の健康管理についても大きく改善する可能性が広がる。

“オバマケア”
 HITECH法成立から1年後の2010年、オバマ政権下で、通称“オバマケア”と呼ばれる「患者保護および医療費負担適正化法」(The Patient Protection and Affordable Care Act law)が成立した。
 オバマケアは、ほとんどの企業従業員が加入している民間医療保険制度を維持しながら、実質全ての米国人に医療保険を拡大するという法律。この新法では、民間の保険者を管理下に置き、民間保険の適用範囲を広げる。また、民間医療保険を買うことができない人にも、メディケイド・プログラム(低所得者向け医療費補助制度)を拡大する。
 オバマケアの一部は、上院で審査中であるが、すでに法として施行され、ヘルスケアシステムとして機能している部分もある。

 HITECH法により電子カルテが普及すれば、医療費の削減効果が見込まれる。この二つの法律は共に、米国における医療費と医療の提供方法を急速に変化させようとしており、2015年までに主な変革は終わるのである。
[略歴]
カリフォルニア州立大学バークレー校にて生物学を学び、生理学で博士号を取得。
日本では慶應義塾大学で学び、三田キャンパスで日本語プログラムを受講、日吉キャンパスの慶應ビジネススクールで研究生となる。
サンフランシスコのマッキンゼーにて経営コンサルタントとして勤務。
ナスダック上場のヘルスケア企業ヴィヴィジェン社(出生前遺伝子診断に特化。現在はジェンザイム社の一部門 )の代表を務める。
バークレー・アンタイバディ社(抗体作成サービスに特化。現在はコヴァンス社の一部門)の創業者兼共同経営者を務める。
日米両国において、ヘルスケア関連の執筆及び講演。
ニューメキシコ大学Science & Technology Corporation、日本疾病管理協会、日本健康科学学会理事
医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック 理事長
武藤 真祐
高齢先進国モデル構想 ~健康・生活支援
コミュニティの創造~

 医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニックは、東京都文京区にある在宅医療専門の診療所である。2010年1月に東京都文京区で、震災後の2011年9月に宮城県石巻市開設以降、患者数は延950人、スタッフは医師27名を含めて51人で運営している。
 我々は、来たる超高齢社会における「高齢者の孤立」を問題視し、年を重ねても安心して暮らすことのできる高齢者の生活を支える地域コミュニティモデルの創造に取り組んでいた。社会的孤立をしている高齢者と社会との接点となりうる在宅医療が基点となり、医療や介護のみならず、高齢者の身体特性にあった食事や住まいのサービス、日用品が手に入る仕組み、金融・法律などの心配事の解決、さらに、生きがいや楽しみといった心豊かに生きていくために不可欠なものが有機的に繋がった新しい地域コミュニティモデルを構築し、社会システムに発展させたいと考えている。
 私はこの取り組みを「高齢先進国モデル」と名づけ、官民が志を合わせ協働するコンソーシアムとして、2011年1月に高齢先進国モデル構想会議を立ち上げた。この構想にはICTの進化は欠かせない。シームレスな情報連携を始め、ICTイノベーションによる地域住民の健康と生活を支えていきたい。
 世界に類を見ない日本の高齢社会問題だが、この後、韓国や中国を始め、東アジアの諸国が同様の問題を抱えることは統計的に明らかである。「この問題を日本がどう解決するか」と注目する諸国に対し、日本は再び先進国として力強く解決する姿を示さなくてはならない。希望ある社会の創造に向け、叡智と工夫を結集し、新しいコミュニティモデルの確立に取り組んでいきたい。
[略歴]
医学博士、米国公認会計士、MBA。1996年東京大学医学部卒業。2002年東京大学大学院修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事。診療所にて在宅医療にも従事する。 2004年より、宮内庁で侍医を務めたのち、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてコンサルティングに従事。その後、医療の側面から社会に貢献したいと2010年1月に東京都文京区にて、震災後の2011年9月には宮城県石巻市にて在宅医療専門診療所を開設、現在に至る。内閣官房高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)医療情報化に関するタスクフォース構成員
社会療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長
神野 正博
 人口の減少とともに高齢化が進む日本。すでに、当法人が位置する能登半島では高齢化率は30%を越える。しかし、今後の“高齢化の津波”は、団塊の世代が65歳を迎える都市部において顕著になる。そこでは、人口あたりの医療病床以上に、介護を提供する施設の絶対的な不足が危惧されている。加えて、少子化と日本経済の低迷による税収や保険料不足は、これから高齢化に伴って増加する医療・介護需要を賄いきれるものかも危惧されている。このような背景のもとで、2025年の日本の社会に対応する目的で国は社会保障・税の一体改革を策定した。それを先読みする2012年度の診療報酬・介護報酬同時改定のトレンドも同様なものであると考える。すなわち、この同時改定のキーワードは、「病院の役割機能分化と在宅」であると考える。
 多くの高齢者を相対的に不足する医療・介護提供施設と居住系サービスを含めた在宅で面倒を見る必要がある。そのためには、あくまでも在宅を支えるために病気が発見された時や急変時に利用する一般病床と介護保険施設、訪問系医療・介護サービスを分かち合う(Shareする)必要があると考える。このようなShareを的確に、かつスピーディに行なうためには医療のみならず、介護や福祉情報の共有化、一元化が必至である。
 われわれは高齢化の進む能登地域で「けいじゅヘルスケアシステム」として急性期や回復期医療を担う恵寿総合病院(451床)を核に診療所や介護老人保健施設、介護福祉施設のほか、小規模多機能型居宅介護施設、通所系サービス、訪問系サービスなどを展開する。ここで1998年以降全施設をオンライン化し、順次、医療・介護に共通した電子カルテを導入し、グループ内の患者・利用者IDの共通化のもとで情報一元化システムを導入した。加えて、2000年にオンラインシステムを利用したコールセンターを設立し、患者・利用者からの問い合わせの一元化とともに、介護施設や訪問系サービスのデータ入力センターとして機能させ、患者満足ばかりではなくITリテラシーのある職員満足にも寄与させている。
[略歴]
1980年日本医科大学卒医籍登録、1986年金沢大学大学院医学専攻科卒(医学博士)。金沢大学第2外科助手を経て、1992年恵寿総合病院外科科長、1993年同病院長、1995年特定医療法人財団董仙会(2008年11月より社会療法人財団に改称)理事長、2011年社会福祉法人徳充会理事長併任。専門は消化器外科。全日本病院協会副会長、日本医療法人協会理事、七尾市医師会会長、石川県病院協会理事ほか。
名古屋大学医学部附属病院 准教授
水野 正明
愛知県で進めている地域包括ケアシステム
『いきいき笑顔ネットワーク』

世界で最も速く超高齢社会に突入した我が国において、在宅医療を効率よく営むための仕組みづくりは喫緊の課題である。一方で医療制度改革の中で高齢者の居場所は「病院」から「生活」へ大きく舵がきられており、従来の「在宅医療」一辺倒な施策ではなく、医療と福祉(介護を含む)の新たな連携と統合を理念においた施策が求められている。このような観点のもと、愛知県医師会、東名古屋医師会豊明支部、豊明市、藤田保健衛生大学、名古屋大学医学部附属病院脳卒中医療管理センター及び東海ネット医療フォーラム・NPOの各組織が連携して医療・福祉情報を共有できる電子連絡帳を開発し、愛知県豊明市において地域包括ケアシステム「いきいき笑顔ネットワーク」を立ち
[略歴]
平成4年 名古屋大学大学院修了
平成8年 名古屋大学医学部脳神経外科助手
平成11年 名古屋大学大学院遺伝子治療学 助教授
平成22年 名古屋大学医学部附属病院脳卒中医療管理センター長 名古屋大学総長補佐
東北メディカル・メガバンク 医療情報ICT化部門長
みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会 理事
東北大学大学院医学系研究科 教授
冨永 悌二
 東日本大震災にて甚大な被害を被った宮城県沿岸の医療施設復興の際、デジタル化した情報を共有し連携機能を備えようとの機運は、現在の電子カルテの導入やネット情報の汎用からむしろ自然な成り行きである。宮城県では、震災以前からいくつかの個別医療ネットワークが存在した。宮城県脳卒中ネットワーク(Smile Net)をはじめ大腿骨頚部骨折、栄養、循環器疾患に関するネットワークなどである。宮城県は、これら医療ネットワークを活用し汎用できるシステムを構築しようとの議論を開始、「新たな地域医療再生計画」の中で県地域医療連携支援センター設置の案が出されていた。
 震災以後、沿岸部医療機関の壊滅・破損を早急に復興させる必要があり、単なる復旧でなくよりよい医療福祉社会の構築を目指しICTネットワークを構築する機運が更に高まった。そして医療福祉ICTネットワーク構築を実現するための活動主体として「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会」が設立された(平成24年6月7日一般社団法人化 理事長 嘉数研二宮城県医師会長)。一方、東北大学医学系研究科からはメディカル・メガバンク構想が打ち出され、東北大学に東北メディカル・メガバンク機構が設立された。三世代コホートを特色とするこのメガバンク事業もデジタル化された臨床データとの連結が必須であり、東北メディカル・メガバンク事業の一環としても医療情報ICT化が打ち出された。この事業は文部科学省(メガバンク事業)、総務省・厚生労働省(医療情報ネットワーク化・被災医療施設再建)の3省が協働する巨大プロジェクトとなった。
 東北メディカル・メガバンク機構とみやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会、それらの事業主体である東北大学や宮城県のかかわりについて説明し、宮城県の医療福祉情報のネットワーク化がどのような体制で行われるのか、報告する。
[略歴]
1982年東北大学医学部卒業、同脳神経外科入局。1986-87年米国生体膜研究所留学、1993年米国バロー神経学研究所留学。1997年東北大学医学部講師。2000年財団法人広南会広南病院脳神経外科部長。2003年東北大大学院医学系研究科神経外科学分野教授。一般社団法人宮城県対脳卒中協会理事長、同宮城県脳卒中ネットワーク理事長、日本脳神経外科学会理事、日本脳卒中の外科学会理事、日本脳卒中学会幹事、他。
みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会 事務局長
財団法人広南会 広南病院 脳神経外科
清水 宏明
 従来、宮城県の医療福祉情報のICT化は疾患グループごとに孤立した試みがなされていたが、必ずしも十分なものではなかった。しかし、一次・二次の地域医療再生計画や、2010年秋に設立された地域医療福祉情報連携協議会の動きを受け、全県的な視野でネットワークを構築する機運が芽生えていた。
 2011.3.11の東日本大震災はこうした試みをいったんは中断させたが、情報確保の重要性をより強く認識する契機ともなった。宮城県では、石巻、気仙沼、仙台の各医療圏沿岸部を中心に、多くの病院が多大な損壊を被った。これらの地域の医療・福祉を復興するには建物などの物の面での整備と並行して、震災前からの課題であり容易に着手できなかった情報のより効率的な運用のためのICTネットワークが必要となった。災害に強いネットワークのありかたを被災地として提唱する役割もある。多くの地域は被災前から医療過疎の問題を抱えており、医療関係者の確保のためにも、仕事のしやすい環境を整える意義は大きい。
 本協議会は宮城県のネットワークを構築し、将来にわたり維持していくことを目的としているが、当面の課題は震災復興でありその大きな柱である総務省の東北地域医療情報連携基盤構築事業に関わってきた。協議会メンバーのほとんどは、医療福祉の現場に携わる方々であって医療情報ICTの専門家ではないうえに、こうした現場・行政・企業が複雑にかかわる事業の経験も乏しかった。さらに、本来年単位の時間をかけてニーズを洗い出し、整理したうえで構築すべきネットワークであるが、速やかな復興の必要もあり検討に費やせる時間はわずかであった。多くの難問にいろいろな方の助けを借りながら対処する必要があったが、こうした復興事業の現場運営面での状況を整理しておくことは今後起きうる災害への備えの一つの側面であると同時に、平常時の各種事業運営にも有意義な検討課題を提供するかもしれない。災害復興に携わる被災地の一団体からみた復興事業の現状と課題を報告する。
[略歴]
1986年、東北大学医学部卒業。同年医師免許、同大学脳神経外科入局。脳神経外科研修医、カリフォルニア大学サンフランシスコ校リサーチフェロー、広南病院脳神経外科勤務などを経て2008年東北大学大学院神経病態制御学分野准教授、2011年広南病院脳神経外科部長・副院長。1992年医学博士、日本脳神経外科学会専門医。専門は脳血管障害の外科治療。一般社団法人宮城県脳卒中ネットワーク事務局長。
札幌医科大学大学院医学研究科 生体情報形態学 教授
辰巳 治之
医療クラウドによる戦略的防衛医療構想
 クラウド・コンピューティングとは、今のiPhoneやsalesforce.comに代表されるように、ネットワークさえあれば、実体はどこにあるのかわからないけれど、何でもできてしまうという、怪しげなムード満載のものである。従って、様々な人が色々なことを言い、煙に巻いている。一時のマルチメディアのようで、キャラクター中心だったパソコンで絵も音も扱えるようになり、それがブームになった。これはPartial Multimediaであった。そこでFull-Multimediaにより、従来の医療を変えようとするものが、「戦略的防衛医療構想」で、その強力な秘密兵器が「情報薬」である。そして効率の良い「情報薬」の開発及び処方の為に「医療クラウド」が必要なのである。
 「情報薬」とはFull-Multimediaによる情報を細胞レベルへ伝達し、細胞を動かし、人々を健康にそして幸福にしようというものである。また、現在の医療はPartial Medicineで、Full Medicineになっていない。内科・外科、西洋・東洋、そして体・心の区別なく、あらゆる手段を用いて理想的な医療を目指すのが戦略的防衛医療構想である。戦略的防衛医療構想(SDMCI: Strategic Defensive Medical-Care Initiative) とは、レーガン政権時の防衛政策のひとつであるSDI(Strategic Defense Initiative)を参考に、生体情報や医療情報のみならずあらゆる情報を集め、その分析に基づきタイミング良く適切な処置をすることにより、医療系における重大事象(病気、医療事故、地域医療崩壊)が起きる前に先手を打つ、或いはそれを根絶することを目指す。
 「情報薬」を最大限駆使しているのが、生命体であり、人間である。基礎医学の解剖学から始まり、生命科学をやるうちに、生命体で起きているようなことを実社会で実現するのには、クラウドが適していると考えている。また、クラウドが威力を発揮するためにも、しっかりとしたインフラネットワークが重要で、そのためにも地域IXやIPv6の本格的な活用が必要なだけでなく、End User Computing(例えば、CyberFrameworkなど)の普及、そして人間の頭の中の情報を、生体外の情報と統合化し、ユビキタス環境におけるゼロクリック・センサーネットワークによって、タイミングよく処方し、フィードバックを掛けられるシステムが重要である。そこでインターネットの将来のためにもIPv6の普及が重要と考え、医療クラウドをmd.jpというドメインで実現したいと夢見ている。
[略歴]
昭和57年山形大学医学部卒業 昭和58年大阪大学大学院医学研究科中途退学、昭和59年大阪大学医学部助手、昭和62年同大学医学部講師、平成元年札幌医科大学助教授、平成7年同大学教授、平成11年同大学附属情報センター所長、大学評議員、平成18年同大学 学長補佐、標本館長、平成23年東京大学医科学研究所付属病院非常勤講師
NPO法人JIMA理事長、NPO法人NORTH会長、NPO法人JAMINA副理事長、NPO法人地域医療情報連携推進機構理事、JPNIC理事
島根県立中央病院 医療局次長 兼 情報システム管理室長
小阪 真二
 島根県では2002年より出雲医療圏で、医療ネットしまねとして様々なサービスを提供してきた。近年、県内の医療過疎は著しく進行、二次医療圏域を超えた医療連携が危急となり、今回、地域医療再生基金で全県医療情報ネットワークを構築することとなった。
 審査機関としてIT専門部会を設置。運用はNPO島根医療情報ネットワーク協会を設立、システム構成、サービス内容の提案、調達、運営等を担うこととした。二次圏域ごとに協議会を開催、要望を整理した。
 基幹システムとして認証・患者ID連携の中継サーバーを構築、基幹システム上で種々のサービスが行えるようにした。カルテ相互閲覧システム、診察・検査の紹介予約システム、画像閲覧システムが選定され、サービス開始に向け準備中である。
 東西に長い島根県の特性から、県境を超えた医療連携が考えられる。また、地域医療再生基金終了後の事業継続についても課題が残されていると思われる。
[略歴]
昭和61年 京都大学医学部卒業
平成10年 島根県立中央病院呼吸器外科部長
平成21年 同情報システム管理室長
平成23年 同医療局次長